“基調講演を聴いてきたシリーズ”
Arm Tech Symposia 2024

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    Arm Tech Symposia 2024

こんにちは、 レスターエンベデッドソリューションズ テクノロジーデザイン本部です。
今回は展示会の Key NoteをBlogとして投稿させていただき、遠方のために会場へお越しになれなかった方々に一読いただければ幸いです。

尚、当日は資料の配布がなく、講演内容を懸命に聞き取りましたが、誤記や解釈について発表者の意図と異なる記載になっている可能性が御座いますので、ご注意、ご周知頂ければ幸いです。

今回のATS2024の入場者数は例年に比べ大盛況でした。
私は出展者ですから早い時間帯に会場へ到着いたしましたが、5階~3階にかけて長蛇の列に直面。
“ん?何を並んでいるんだ?”と思いながら歩を進めると、基調講演待ちの列でした。今年の基調講演への期待の表れ(?)ですよね。

Gest Key Note:「我が国の半導体政策」
Speaker:
 経済産業省商務情報政策局長 野原

九州のTSMC、北海道のラピダスを筆頭に日本の各所で半導体関連事業の話題が連日伝えられている中で、Arm主催の展示会において日本の行政機関の基調講演を聞ける機会は有難いですね。

半導体政策の3つの政策目的

  1. 将来の半導体不足への対応
    (今回の半導体調達問題により市民生活や企業の売り上げに大きな影響が出たことを考慮)
  2. 経済成長戦略 今後10年で50~150兆円への成長産業に対して
    (世界各国が半導体産業誘致を進めている状況なので財政出動により確保  過去3年間で4兆円を投資中)
  3. エネルギー政策  様々なモノがAI化により電力不足を懸念している
    (AI化により増加していく電力消費を供給可能な水準にテクノロジー(最先端CHIPの活用など)で抑制)

今回の半導体政策は、過去の政策と2つの点で異なる

  1. 機会をとらえる  国際情勢により グローバル サプライチェーンの組み換えが進行中であり、ぜひ基幹産業化としたい
  2. 過去の政策失敗の反省  なぜWWシアー50%(1980年代後半)が無くなり10%に落ちたのか?を分析
        ↓
    半導体は生活を支えており、ハードウェア、ソフトウェアを支える基盤。

日の丸半導体の没落の要因

  1. 強力であった故に、日米(国際)貿易摩擦によりメモリビジネスが敗戦へ
  2. 設計と製造の水平分離の失敗
  3. デジタル産業化に遅れがあった  日本国内に半導体産業の川下のお客がいなくなった。
  4. 日の丸半導体、自前主義の考え方に問題があった (研究開発のみ支援し、事業化時には手を引いた)
  5. 国内企業の投資縮小と韓台中の国家的企業育成があった

全体構想として、
 Step1:供給能力の確保
 Step2:日米欧連携(次世代の量産化)
 Step3:NTTプロジェクト支援を行い、2030年には生産企業の売り上げ15兆円を目指す( 2020年実績 5兆円 )

熊本の経済効果

設備投資の効果については、前年比80%増の投資効果が2年続いており、雇用への効果も1万人の雇用効果が発生。
また新たな企業の進出も進んでおり、税収も増えております。

ラピダス プロジェクト(千歳)

国内あるTSMCからは供給できない先端テクノロジーの供給体制を作ることが主たる目的
今年5,900億円を投資し、合計9,200億円を投資中。工程としては2025年にパイロット稼働、27年に量産を予定している。

研修プロジェクト

 “LSTC” により半導体の設計人材の育成支援中。

余談として、 「半導体投資に関しては、与野党でも大きく指示を受けており方針変化はない。 ちなみに、共産党は反対の姿勢を示している」とコメントあり。


エンジニアのつぶやき

非常に内容は良かったです。 
でも、半導体ビジネスに長く関わっている立場で今回の講演を聞かせて頂いた感想としては、
・あの時、2010~12年頃? 富士通様をはじめデジタル半導体を牽引してきた企業が設備投資・技術投資に苦しみ、工場売却など実施した時。
今回の様な支援があれば、現在の日本のポジション・景気とは異なっていたと思います。
・あの時、行政が適切に支援して半導体産業がトップギアのまま10年間駆け抜けていれば如何なっていたのだろう。 

「日の丸半導体の没落の要因」の講演内容に関しても、業界に長く携わっている方と会話をしましたが、「ちょっと、違う気がする」というコメントもありました。
かつての日本の半導体事業は、WWのマーケットリーダーだったので現在の没落は悲しい限りです。
是非、行政は“仕切り直し“により同じ過ちを犯してほしくないと言う気持ちです。

まぁ~結果が分かっていれば、なんとでも言える感想ですがね。

Key Note「未来に向けたAIコンピュート・プラットフォームの構築」
Speaker :
 Arm株式会社 オートモーティブ事業部 Dipti Vachani
 株式会社本田技研研究所 常務執行役員 小川 様

Arm株式会社談話からの集約内容

Arm社調査では、医療業界のR&D投資額の50%ではAIに対して行われており、AIのポテンシャルはモバイル・IoT・自動車・医療・インフラにある。
今後、コアとしてはCPU → GPU → NPUと遷移していくが、プラットフォームが重要となる。
全世界の人々がスケーラビリティーの進む中で、日常的に使用されるAIにするためには、電力効果を発揮する必要がある。
AI市場の今後を予想するとすれば、2025年にはArmデバイス上で動くAIは、「100ビリオン+」になると見込んでいる。(すごいですね)

本田技研談話からの集約内容

小川様より“自動運転におけるソフトウェアの重要性”の説明がありました。
本田技研では、ハードウェアよりソフトウェアの方が開発量が多くなっている傾向があり、開発プロセスの変化も発生しており “システムエンジニアの重要性”を講演の中で随時強調されていました。
おそらく、10年以内にMLなどの導入が確実視されている事もあり、ソフトウェア開発に対しての技量が求められることになり、いまより更にソフトウェア開発が重要課題となる。
ハードウェアに関しては、CPU・GPUに続きNPUの登場によりEdge AIの性能向上が期待される、と展望を頂きました。


エンジニアのつぶやき

「10年前には、AIは夢物語だった。」から始まる基調講演でした。
現在、私たちは手元でAIが使える状況になっており、当初はハードウェアにより牽引されていたが、現在はソフトウェアが牽引している状況と思われます。
この10年の間で、AI企業が多く市場へ登場した時期もありましたが、現在の主流はNVIDA・Googleなどから提供されるOSSを活用する事が主流となっており、AI企業はアルゴリズム保有企業にスポットが当たる状況に変わっている様に感じます。
ハードウェアのテクノロジー進化の頭打ちが現時点では見えており、ソフトウェアのテクノロジー進化の方が進むと思われる為に “ソフトウェア重視姿勢”が各社より提唱されていると思われます。

Arm & パートナー対談セッション : AI時代における新たな戦略と機会
Speaker :
 パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 次長 中尾
 富士通研究所 先端技術開発本部 エグゼクティブディレクター 吉田 様

パナソニック様からの講演要約内

今後、“価値が増大する”ソフトウェアが重要と考えており、従来の開発手法から転換して、ハードウェア開発後にソフトウェアを開発する手法ではなく、ソフトウェア・ファーストの開発が必要と考えている、とご説明。
それを実現するために、Arm社との提携を本日プレス発表し、標準化に向けた協業により車のアーキテクチャの標準化を狙いたい、とご説明。
その為ソフトウェアとハードウェアの開発を分離して開発スピードを上げる手法を取り、
それによりソフトウェアの再利用性も上げる事が出来き、最新世代のハードウェアの採用も容易となるはず。
その為の施策として、

  1. デバイスの仮想化インターフェースの開発 (依存性の高かったハードウェアの分離)
  2. デジタルツイン( vSkipGen™)
  3. 複数のディスプレイを1枚のパネルとして統合する技術により1CPU 1パネルという環境の分離を試みる

パナソニック様が考えるAIの課題は?

現在のAIモデルはクラウドベースなのでリアルタイム性、セキュリティ性において優れているとは言えず、AI Edgeの開発を実施しております。
AIの適用は必要不可欠であり、コクピットへ導入することにより如何に“車室空間の構築”する事が出来るのか?がビジネスチャンスとご説明。

富士通研究所様からの講演要約内容

富岳に採用されているA64 FXの開発を牽引されており、次世代のプロセッサーコードネーム“MONAKA”も牽引されています。
当日は、MONAKAの評価CHIPを持参されており、お披露目いただきました。
2027年にリリース予定のMONASKAには、「データの増大・AI 電力消費・半導体コスト・セキュリティなどの問題が出ている」とコメントをされていました。
MONAKAで採用されているテクノロジーは、TSMC社の “コア部分は2nテクノロジー” “I/O部分は5n” “キャッシュは5n”が採用されており、3DのメモリセルはTSMCと開発されている。
という感じで、凄いCHIPです。

パナソニック社と同じく、富士通社もソフトウェアに関しての事柄を多く述べられており、「一番大事なのは、ソフトウェアでOSSの活用が重要と考えており、富士通はOSSベースに切り替えた。」と報告がありました。( “自前主義を辞めた?”と思います。)
富士通のAI戦略は、
 ・セキュリティを担保して生成AIを活用する
 ・小規模の生成AIであればMONAKAだけで対応できる


エンジニアのつぶやき

Arm社とパナソニック社が“ソフトウェア・ディファインド・ビークルの標準化に向けて提携”を本日発表したと講演に合わせたのでしょうか?インパクトのある内容でした。
会場では、提携内容の説明はありませんでしたが、“仮想フレームワークにより自動車ソフトウェア開発をハードウェアから分離し、自動車業界の開発サイクルを加速させる“内容であり、当日の講演内容と合致する事柄でした。
富士通のスーパーコンピュータ用SoCが“小規模の生成AIであればMONAKAだけで対抗できる”と仰っており、Edge AIにMONAKAが採用されるイメージを描いたのは、私だけでしょうか?

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参考リンク

更新履歴

2024.11.26 新規作成